悲しみ癒やすぬいぐるみ (2006/01/28

朝日新聞 2006年1月14日土曜日 19面生活

悲しみ癒やすぬいぐるみ・・・亡くしたペットに生き写し
青森県の作家注文相次ぐ 毛並み・顔つきも再現

「亡くなったペットをぬいぐるみにしたいーーーそんな注文が、ペットと死別した人たちから青森市のぬいぐるみ造形作家、隆矢朋子さん(44)のもとに舞い込んでいる。毛並みや顔つきなど、ひとつずつ特徴を生かして実物の大きさに仕上げる手作りのぬいぐるみは、10万円前後になることも多く、決して安価ではないが、注文から完成まで3ヶ月待ちという人気だ。」(神田朋美)

「毎日、仏壇の前で泣いています。優しい子でした。この子が死んだら私も死のうと思っていた」
 最近、愛犬のスピッツを亡くして注文をしてきた女性からの便りには、こう書かれていた。
 犬と猫が中心だが、最近はウサギやハムスターの注文もある。白地に茶色のブチのウサギを注文した人の便りには、「体の部分によって微妙に毛の長さが違って、頭の上が長いです」とあった。
 写真を参考にするほか、体の模様や特徴、性格などが書かれた手紙やメールを読んで、実物の大きさで完成させる。1体造るのに1週間から10日かかる。

半年待ちも

 隆矢さんは、13年ほど前からテデイベアを作り始めた。02年にインターネットのショッピングサイトに出品し、テデイベアの通信販売を始めた。
 間もなく、「亡くなったネコそっくりのぬいぐるみを作ってください」と注文があり、応じた。しだいに同じような注文が増え、今では亡くなったペットをぬいぐるみにすることが専門になっている。
 月3,4件の注文が寄せられるが、時には月20件にもなり、半年待ちになることもある。
「毛並みは短めで足回りはカールしています」「左右のひげの色が違っています」など、身体の特徴はまだわかりやすいが、「やんちゃでした」「賢い顔つきでした」という希望にも、できるだけこたえるよう努力している。
 まず頭から作るが、イメージが違って、途中で作り直すこともしばしばだ。
 隆矢さんが作るぬいぐるみは「ペットロス症候群」の人たちに癒やしを与えている。
 ペットロス症候群とは、愛するペットとの別れによる深い悲しみが原因の心や体の様々な症状を指す。食欲がない、何もする気がしない、眠れないなどで、重くなると、うつ病などになり、治療が必要になってくるケースも少なくない。
 日本ペットロス協会代表で、臨床心理士の吉田千史さんは、「ペットは深い愛着の対象で、癒やされ、支えられる対象。飼い主は、小さい子供が先に亡くなったような気持ちになる」と話す。だが、ペットロスを理解する医師や臨床心理士はまだ少ないという。

涙が出た

完成したぬいぐるみを届けた後、隆矢さんに寄せられたお礼のメールや手紙。
「特徴が見事に再現されて感銘を受けました」「みんなで興奮して涙を流しながら抱きしめました」「届いてから家内のうつ病状態も安定して薬の量も減ってきました」
 こうした反響に一番驚いているのは、隆矢さん自身だ。「本物にそっくりだけど、はくせいのようではなく、かわいらしさを残してペットを再現していきたい」と話している。
インターネットのサイトアドレスは
  http://arc.fujitv-mirai.com/yumi/
        となっております。」





FP田中広江談
 確かに子供に先立たれた親のことを考えたら、もし自分の家族にそんな悲劇が訪れたら、尋常の精神状態で居られる気がしません。人は勿論、ペットでも死に目に会うのは辛い事です。そんな辛い気持ちを少しでも和らげてくれるなら、金に換えられない価値があることだと思います。
 昔から飼っていた犬はいましたから、我が家でも何度か死に目に会いました。その時悲しくても、これが生き物の定めと思い割切っていました。そしてまた忘れた頃に、飼いたくなって飼うというのが現状でしょうか。先日ある番組で、100匹の雑種犬のうち、熊に襲われた飼い主を助ける行動をとるのが、何とたったの3匹でした。いくら可愛がっている愛犬でも、こちらの思い入れの程思っていないのかもしれません。我が家の龍生(オス2才)も逃げそうですね、私をおいて。
 ついついペットに走りがちですが、人ほど、家族ほど大切なものは無いということは、至極当たり前のことなのだと思います。